裕也「こんなんじゃ、屋敷の世話で一日が終わってしまう」
と、いうか生前祖父がこの屋敷で一人で過ごしていたのが信じられない。
今は夏で大学も休みだからいいけど、これから先の事を考えると気持ちが沈む。
裕也「はぁ……」
――ピンポーン――
ため息をつくと同時に、突如屋敷内に響いたベルの音。
裕也「ん? 誰だ? こんな森の屋敷に来客か?」
新聞の勧誘か、何かだろうか?
――ガチャ――
裕也「はい、どなたですか?」
扉のむこうには、女の子が二人立っていた。
こんな森の中でメイド服とは……随分と珍しい恰好をしている。
しかも二人ともなかなか可愛い。
???(あずみ)「あのぉ〜」
二人のうち、髪の毛を結んだ目のぱっちりとした女の子が口を開いた。
???(あずみ)「あたし、あずみと言います〜」
のらりくらりとした口調で、頭を下げてくる。
あずみ「ほら〜、いずみちゃんもちゃんと挨拶して」
あずみと名乗った女の子はすぐに隣にいたロングヘアの女の子に話しかけると、その子も軽く俺に頭を下げてきた。
???(いずみ)「……いずみです」
あずみ「あたし達。メイドの姉妹なんです〜」
裕也「はぁ……。押し売りかなにかですか?」
いずみ「そんなんじゃありません」
あずみ「ずいぶんと大きなお屋敷なのでメイドはいかがかなぁ? と思いました」
裕也「メイドかぁ……」
メイドの押し売りなんて聞いた事がない。
たしかにメイドがいてくれたら、色々と助かるけど……。
裕也「悪いけど、俺。君達を雇う金はないんだ」
いずみ「それはご心配いりません」
あずみ「あたしたちをここに住ませてくれれば、それだけでいいです」
裕也「へ? それだけでいいの?」
いずみ「ええ、住むところもなくて困ってたので……」
あずみ「しっかりとお世話させていただきます。いかがですかぁ?」
二人のメイドが切実そうに俺を見上げてくる。
タダで部屋の掃除をしてくれるのか……それにこんな可愛らしい子達二人と一つ屋根の下の生活か……。
裕也「悪くないな……」
俺は二人のメイドを屋敷へ招き入れる事を決めた。